映画 鋼の錬金術師 シャンバラを征く者

ネタバレ感想
観ました。平日のレイトショーなので子供や腐女子もいなく(ウワサによるとキャラが出るたびキャーキャーと騒いで迷惑極まりないらしいので)、ゆったりと映画を楽しめました。
内容のほうはというととりあえずアニメの最終回のその後の話なので、まずはアニメ版を知っていることが前提条件。原作にはいないラース(大総統ではないほう)や平行して現実世界などアニメオリジナルの設定がいくつも出てきます。

話に入ると冒頭は鎧のアルフォンスが出てきて、科学方面の特産物であるウラニウムなどの単語を敵が発するので、アニメ最終回でアルが人間に戻っていることを知っていると「あれれ?過去?未来?」という時間軸が狂う感覚に陥ってしまいます。実際はまだエドたちが賢者の石を探していた頃の過去の話で、ファンタジー世界のエドと鎧アルフォンスというデフォルトの状態なので「ああ、ハガレンだ」と馴染みやすい。それからの展開はさすが映画といったいろいろなアングルで動き回るアクションシーン。敵が普段の劇中では出てこなかった機械という代物を持ち出してくるのでスカー戦のような人間同士の錬金術戦を見慣れていると新鮮です。バカでかいものに挑むという構図の少年漫画らしくて爽快。死に際に敵が人体練成を行い、アチラの世界に行ってしまう展開もこの先への伏線が含められていて秀逸でした。

さて、その後OPに入るワケですが、アニメの復習をしなければならないとはいえ、以前のアニメの映像を見せられるので少し残念。たしかにカッコイイ演出もあるのですが、それもDVDのジャケット絵というものなので、105分という短い時間にもっと新作の映像を見たかったというのが本音。

―本編。現実世界(1923年のミュンヘン)からエドと現実世界の別物のアルフォンスがヒッチハイクし、そこで心が読めるというジプシーのノーア(ロゼ?)と出会う。それにしてもアル2の死亡フラグはわかりやすすぎ(汗)。ここらあたりでジプシー達が歌い始めるのだが、なかなかハガレンにしては風変わりな音楽で面白いと思った。でまぁ特殊な力を持つノーアを軍人が狙うのだけど、ここらへんで普通にエドがノーアを助ける展開になるところはナディアとか昔の作品ぽくて新鮮味がないなぁ、とは思った。エドはその世界では錬金術が使えないので派手なアクションがなく窮屈に感じる。

エドとノーア、普通に逃亡。かくまって普通に日常。世界感を見せるためとはいえ、軍人に狙われているのにスローテンポだよなー、とは思う。平行世界ということで既に死んでいるハズのヒューズさんが現れたり、ブラッドレイ大総統が金持ちユダヤ人という立場で現れたり、ドラゴン退治として共に現実世界に来てしまったエンヴィーが序盤から出てくるところは良かった。エンヴィーは敵の中でも代表というイメージがあるので、変身能力を生かしての黒幕なのかと思っていたので、そういうベタベタな展開はなしにいい意味で裏切ってくれた。結局、現実世界の兵器であっさりやられているところなんかは情けないが(汗)。………エドが軍人に気絶させられるところで、なぜもっと徹底的に束縛しないのかという敵の甘さが、シナリオの甘さでもあると思う。いつでも敵は主人公を倒せる立場にあったのに機会を逃してやられるっていうのは少年漫画のお約束パターンなので。大総統はいい役をもっていくなぁ。

ファンタジー世界視点。ロイが伍長に降格させられ左遷されられシンミリしているかと思えば、アームストロング少佐は財団として金ぴかゴージャスな建物を練成してるわでやはり錬禁世界はしっちゃかめっちゃかで面白い。現実世界からの転送で送り込まれた鎧兵士達に対し、アル(人間ver)登場で竜巻を練成(!?)したり「鎧に魂の一部を定着させたり(キターー!)」と大活躍。このあとアル株の下落を考えると滑稽に見える。生命体は転送過程で外部の圧力からうんたらとか、異世界間の転送の感覚が機動戦艦ナデシコのボソンジャンプぽいですね。とにかく現実とリンクしてきたり、脅威が迫ってきたりといい展開です。

後半はラース対グラトニーにアクションシーンがスゴい。セントラル地下の古代都市で馬鹿でかく醜悪に育ち暴れ狂うグラトニーにホムンクルスの肉体能力と鋼の義肢をもってあがらうラースの姿に感動。その隣で何もせず傍観しているアルがいて、「何をやっているんだお前は」と一気にアルの評価が落ちます。鎧としてエドと旅をした4年間の空白の差でしょうか。

ついに侵略してきた現実世界の軍隊と錬金世界の軍隊との攻防。条件付きでしか錬金世界に来られないという敵の設定や錬金術という圧倒的に優位な戦力もあってか、それから先はなんの脅威もなくサクサクと話が進んでいく感じですね。大佐復活オメー!といっても少佐や他の国家錬金術師だけの力でやすやすと鎮圧できそう。

エドが錬金世界に帰ってめでたしオワリだと思っていたので。結局、現実世界に戻ってしまうエドや、兄についていくアルという展開は意外。しっくりこない終わり方だったが、総合評価としてはよく動いてメインキャラクターを活躍させた面白い作品だった。

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